土湯こけしの里で受け継いだ
伝統こけしの「型」を守る

らら・カフェ 2022夏号(第59号)/ 2022年6月


▲名工と言われる工人の作品も多い

土湯こけし工人組合 こけし工人 阿部国敏さん

 日本全国でも地域のニュースでも、とかくコロナ禍の話題が大きくなりがちであるが、昨年から福島市の観光には決して小さくない変化が訪れている。とりわけ東北中央道の県内区間の全面開通と、県都福島市にとって待望だった道の駅ふくしまのオープンは、地域全体に明るい空気を運んでくれた出来事だ。
 風情あるいで湯の里に伝統こけしの文化が溶け込んだ土湯温泉は、県外からの人気も高い観光地であり、本来は右記のようなニュースは、大きな追い風になっていたはずである。震災やコロナ禍により多大な影響を受けた土湯の今を、土湯のこけし職人のまとめ役を務める阿部国敏さんに伺った。  

土湯こけし祭り
 取材に伺ったのは4月中旬。6月の土湯こけし祭り開催に向けて様々な準備が進んでいる最中だった。今年で46回の歴史ある催しであるが、「例年は桜が咲く頃合いとは言え標高の高い土湯では肌寒い日も多い4月に開催し、一昨年の中止をはさんだ昨年は盛夏に近い7月末に開催しました。今年は気候の良い時期にと6月初旬の開催になりました」と阿部さんから開催時期の決まった背景を教えていただいた。
 「土湯こけし祭りは、近年のこけしブームなどに後押しされるように、以前よりも来場される方々の年齢層が広くなり、とりわけ女性のお客様の割合が大きく増加しました。こけし祭りにご来場の方は常連さんと言っても差し支えないくらい、毎年のように足を運んでいただく方も多数いらっしゃいます」
 こけし愛好家はとても熱心な方が多い。伝統こけしの職人は「こけし工人」と呼ばれるが、作品も含めて工人自身のファンになる方も多いと言う。
 「前回までは企画コーナーを設けて、各こけし工人がその企画用のこけしを相当数提供していました。それはそれでとても好評だったのですが、その製作に時間が割かれるために工人本来の作品は十分な提供数を確保できていませんでした。熱心な愛好家の方にしてみると、せっかくのお祭りなので工人それぞれの作品をもっとたくさん選びたいという要望も大きかったんです」
 そこで今回は、工人それぞれが別のブースを構えるように展示内容を変更したという。
 「工人ごとにブースを作ることで、一人ひとりの作品をじっくりと楽しんでいただきたいと思っています。また前回までは露店形式がメインでしたが、今回は『湯愛舞台』を活用し天候に左右されない屋内店を中心に展開することにしました」


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